2024年08号
夏になると、暑くて眠れないという経験をするように、暑さは睡眠を妨げます。人が眠るためには、身体の深い部分の温度である深部体温を下げる必要があります。深部体温を下げるために、人はつの方法で身体から熱を逃がします(放熱)。一つは身体の表面の皮膚の温度を上げる方法、もう一つは汗をかいて蒸発させる方法です。高温多湿な日本の夏では、皮膚の温度を上げても、汗をかいても放熱が妨げられます。深部体温を低下することができないため、覚醒が増えて眠れなくなります。人の体温調節は、覚醒時の方が睡眠時よりも機能が高く、高温多湿な環境で眠ると、体温調節を維持するために覚醒してしまうと考えられています。睡眠よりも体温調節が優先されるのです。そうして、寝不足の状態となると、日中の深部体温が上昇してしまい、このことが熱中症リスクを上げるといわれています。
なぜ睡眠不足時に深部体温が上昇しやすいのか、そのメカニズムはよく分かっていませんが、脳内の体温センサーや放熱をコントロールする自律神経に何らかの機能低下が生じているのかもしれません。熱中症では体の炎症を引き起こす免疫物質の血中濃度が急上昇することが知られていて、体温上昇やその他の症状を悪化させている可能性もあるようです。また、我々は昼寝で睡眠不足を補えば大丈夫とも考えがちですが、残念ながら昼寝によって眠気やパフォーマンスの改善は見られるものの、睡眠不足による深部体温の上昇を防止する効果は認められないといわれています。「昼寝で解消できるのは眠気だけ」という睡眠不足の鉄則が熱中症にも当てはまるようです。やはり熱中症対策には、夜中にグッスリ眠って体調を整え、水分をこまめにとって、塩分(ミネラル)も適度に補充し、室温や湿度に気をつけるなど地道な対策しかなさそうですね。快適に眠れる室温の上限は℃と言われ、冷房を使用する必要があります。日中の環境や行動だけでなく、夜間の睡眠環境を整え、しっかり眠ることが大切です。 西 邦光
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