2023年04号
東洋の考え方では春は冬のあいだ優勢だった「陰」が少しずつ減り、「陽」が一気にあふれてくる季節のはじまり。花々が咲き乱れ、木々も一斉に芽吹いてくる明るい季節ですが、そんな季節の陰陽バランスの変化に我々の心と体も引っ張られて影響を受け始めます。さらに、4月からは進学や就職、転勤、異動、引っ越しなど、社会生活においてもなにかと慌ただしくなる時節でもあるので、心にも体にもアンバランスが生じやすい季節としてとらえることができます。自然だけでなく私たちの体の中にも陰陽要素は存在していて、どちらかに傾きすぎてしまうと不調が生じやすくなりますが、事前の知識があればそれらを緩和することができます。「陽」がグングン満ちてくることで、私たちの五臓六腑も全体的に活性化してきます。肝心脾肺腎という五臓の「肝」も活性化し、冬のあいだに体中に溜め込んでしまった不要なもの(老廃物や脂肪など)をとにかく一気に解毒しようとしてフル稼働、疲弊しやすい状況を強いられています。「肝」が疲れてしまうと、本来の機能にあれこれ不調が現れてきます。例えば、「肝」に充分貯蔵されているはずの「血」が不足することで精神的に安定せず、イライラや不眠、気持ちの揺らぎなどが生じやすくなったり、めぐりが滞ることで肩こりや筋がつりやすくなったりします。また、春の「陽」の気の急激な上昇も手伝って、「血」が体の上部に溢れ出して停滞しやすいので、頭痛や鼻詰まり、めまいやふらつきなどの「上半身の症状」が出やすくなるのもこの季節の特徴のひとつです。花粉症の症状の中でも、目の充血やかゆみ、鼻詰まり、喉の炎症など体の上部に「血」が停滞することで起きる症状は、この「肝」の乱れに由来するものとされています。春の養生で大切なことは、まずはこの「肝」の調子を整えていくことです。「血」を満たす性質のあるほうれん草やナツメ、アサリ、牡蠣などの食材を意識的に食べ、酸味のある酢の物なども食べましょう。目の酷使を避けることも大事なので就寝前は部屋の明かりを落としてPCやスマホを見る機会を減らすとよいでしょう。 西 邦光
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