2019年09号
若い頃の身体を担当するのが、新しい免疫システムです。胸腺は心臓よりやや上部にある木の葉形をした器官で、主にT細胞を作っています。T細胞の前駆細胞は骨髄で作られ、胸腺で教育を受けて認識能力や戦闘能力の高い選び抜かれたわずか3%のものだけがT細胞として送り出されるのです。胸腺なくしては、敵を攻撃するT細胞の司令官としての役割も武器という抗体をつくるB細胞の戦闘力も発揮できません。残念ながら、胸腺の老化は早く、10代半ばに大きさは最大になり、20代をピークに萎縮を続け、40代にはその10分の1以下になり、年を重ねれば重ねるほど、脂肪の塊に変わっていきます。そのため、20代以降はT細胞の数も減少していきます。加齢とともに骨髄も脂肪化し、B細胞も現象、リンパ節や脾臓も萎縮していきめす。加齢とともに、免疫力が低下もしくは過剰になって病気になるのであれば、健康を維持することはとても難しく、病気になる不安が増すばかりです。でも大丈夫、安心してください。免疫システムは新旧二つが共存していますから、20代をピークにシステムの主役が交代していきます。今度は加齢とともに古い免疫システムが活発になってきます。体を守る基本的な機能を持っている腸や肝臓で作られる胸腺外分化T細胞、NK細胞、初期のB細胞です。胸腺外分化T細胞は胸腺で作られるエリート司令官ではなく、野武士のようなタイプで、体の中の異常化した細胞を排除する役割を果たします。年を重ねるとともに、体内の酸化物質が増えて交感神経優位に偏り、増えすぎた顆粒球の放出する活性酸素がトラブルを引き起こします。癌、糖尿病、脳卒中、膠原病などの慢性病は活性酸素による酸化が引き金となるものが多いので体内の異常化した細胞を見つけ出して取り除くシステムが中心となって働きます。若い時は外から侵入してくる敵に対抗する免疫システムを強化して生命力を守り、年を取ると体内で異常を起こし始める自分の細胞を監視し、排除する免疫システムへ移行が始まるというわけです。
参考文献:「非常識の医学書」実業之日本社(p271.272.273)
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