2007年 10月号
夏の暑さもようやくおさまり、すごしやすい季節となりました。 この時期になると「天高く馬肥ゆる秋」という故事がよく使われますね。現在では「豊穣の秋」や「食欲の秋」をイメージさせる言葉として使用されていますが、元々は全く意味の違う故事なのだそうです。紀元前、中国の北方に匈奴(きょうど)と呼ばれる騎馬民族が遊牧生活を営んでいました。彼らの住む土地では冬の寒さが厳しく、その期間は食料が全くとれなかったそうです。匈奴の人々は馬に春や夏、十分に草を食べさせ肥えさせ、そして、秋になり農耕を営む人々が収穫の時期を迎えると、その収穫物を強奪するために馬を駆って一斉に南下してきたのだとか。つまり、「天高く馬肥ゆる秋」とは「秋には北方騎馬民族の侵略を警戒せよ」という戒めの言葉であり、「秋には必ず異変が起きる」という意味の故事なのです。確かに現在われわれが持つイメージとは全く違いますが、秋には必ず異変が起きるという意味においては是非皆さまにも教訓として頂きたいです。秋という季節は万物が夏の発散の時期から収斂(ひきしまること)へと移行し変化を起こす時期なのです。ですからこの時期に体を冷やしすぎたり心を動揺させると心身は病の状態に陥りやすいのです。夏の疲れを癒して体を労わり、心穏やかにこの結実の時期を過ごしましょう。 さて、今の時期に結実する果物で「林檎」があります。りんごの酸味にはクエン酸・リンゴ酸・酒石酸などが含まれ、疲労の回復や風邪に対する抵抗力を高める働きがあります。また、りんごの食物繊維は水に溶けやすく水分を含むとゼリー状になります。それをペクチンといい、腸内のビフィズス菌という善玉菌の餌になり、ビフィズス菌が悪玉菌を抑制して整腸作用を発揮します。またペクチンはその整腸作用に伴ってコレステロール値を降下させ、血行も良くするため高脂血症や高血圧、心臓病に良い効果があります。そして、りんごのポリフェノールはエピカテキンという成分で、お茶のカテキンよりも抗酸化作用が強く、水や熱に強い特徴があります。ですので色々な調理をしてもりんごの効能は変わらず発揮されやすいのです。但しペクチンもエピカテキンも皮に多く含まれます。 参考文献:「東方栄養新書」 メディカルユーコン社 |
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