2008年 09号
旧暦9月9日は陰陽五行論の考え方から縁起のよい陽数(奇数)の最大値である9が重なることから、「重陽」と呼ばれます。五節句(人日、上巳、端午、七夕、重陽)の中でももっとも重んじられてきました。重陽の節句は別名「菊の宴」ともいい、古くから宮中に年中行事の一つとして伝わってきました。菊は翁草、齢草、千代見草とも別名を持っており、古代中国では、菊は仙境に咲いている花とされ、邪気を払い長生きする効能があると信じられていました。その後、日本に渡り、平安時代には前日の9月8日に菊の花を真綿でおおって菊の香を移し、その翌日の朝に露に湿ったこの真綿で顔にあてて、若さと健康を保とうとする行事がありました。これを「菊の着せ綿」といいます。また重陽の日に菊の咲かない年は、綿で菊の花を作ったという記述もあります。この日は観菊の宴が催され、菊の花を酒に浸した菊酒を酌み交わして、人々は延命長寿を祈りました。
今回は菊ではなく百合の根、「ゆりね」についてご紹介します。ゆりねは東洋医学的に見ますと潤いの性質を持ち、熱を収め、陰の気を補ってくれます。そのため、微熱やほてりがあり、空咳が出ている方や秋の乾燥で呼吸器が弱る傾向のある方にお勧めです。栄養素の点からみますと、ゆりねに多く含まれるビタミンB2は糖質や脂質、タンパク質の代謝に関わり、細胞の再生を促します。粘膜を丈夫にするので、口内炎などに効果があります。また、過酸化脂質の生成を抑える作用を持つので動脈硬化や老化の予防に有効と考えられています。日本において欠乏症が多いビタミンB2はレバーや卵黄に多く含まれますが、野菜にはあまり含まれていません。ゆりねは野菜の中ではビタミンB2を多く含みます。そのほか、ゆりねにはカルシウム、リンが多く含まれています。これらは骨の生成には欠かせない成分です。また最近の研究により、アレルギー性喘息の抑制効果、安眠作用、ゆりねに含まれるカルシッシンによりガン細胞の増殖を抑制する効果があるといった報告があります。
皆様のおかげをもちまして、この8月28日で当院は開院よりちょうど2年が経ちました。ありがとうございます。今後ともどうぞ宜しくお願い致します!
参考文献:「東方栄養新書」 メディカルユーコン社
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